薬学教育の2面性を憂う・・・パート2~私の考える打開策~

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薬学教育の2面性を憂う・・・パート2~私の考える打開策~
2015/03/24

そもそも「創薬研究」を目指していた「薬学教育」が、「薬剤師養成義務」を余儀なくされてしまったことに、6年制へ向けての大学薬学部の迷走が始まっている・・・と私は見ています。「~いやあそれは違うだろ~!そもそも4年制のころから「薬剤師養成義務」はあったはずでしょ~!」と反論されるかもしれません。確かに4年制の時代から「大学薬学部卒業」、が唯一薬剤師国家試験受検の資格条件でありました。しかし、よく4年制の頃の社会情勢を考えてみてください。薬剤師の国家試験は薬学部を卒業しないとその受験資格はもらえなかったものの、人気のある就職先は企業の研究、開発、営業、といったところです。・・・それらは薬剤師の資格がないと就職できない分野ではありませんでした。今、卒業生の30%が就職する、ダントツの就職先である「薬局」に至っては上位10位以内にも入っていませんでした。

言うまでもなくその理由は当時の「医薬分業率」です。当時のそれは10%にも満たない状況で、薬剤師といえども町の薬局では、シャンプーやティッシュペーパーなどの雑貨を中心とした物品販売がその業務の主流で、それらの価格競争や流通ノウハウを身に着けることが1つのスキルでした。残念ながらそんなスキルはおよそ薬学教育とは縁の薄いものです。従って、今盛んに行われている実務実習などの産・学の交流のような活動は一切なく、我々実務者側も業務について大学を頼ろうというような発想すら起こりませんでした。要するに大学の教員は、いわゆる臨床に接する「薬剤師」になった学生については、卒業さえさせればあとは「ヨキニハカラエ!」で良かったのです。にもかかわらず、薬剤師国家試験の合格率は全体で常に90%以上をキープしていました。要は、資格を“与える側”も”もらう側”も「薬剤師」という国家資格に対してそれほど重要視していなかったのではないでしょうか?

口には出せないでしょうが、大学の教員にとってみれば、そんな“無責任さ”が許されていた環境は、今考えれば”良かった時代”と感じているのではないでしょうか?特に有機系・合成系をはじめとする創薬分野の教室の教員にとってみれば、「処方箋調剤」なんて全く関心も関係もない分野でしょうから、そういう考えも無理もない自然なことだと思います。

 

しかし、医薬分業率がうなぎ上りに進展するのと並行して、社会も医療の中での「薬剤師」の存在を認識するようになってきました。そのような社会背景の中で、薬学部の6年制がスタートしました。薬学部としても「薬剤師養成教育」は無視するわけにもいかず、これまであまり大学には縁が薄かった臨床の実務者を大学教員に招き入れて実務教育に本腰を入れてはじめました。さらに学生に対しては5年次には1年間をⅢ期に分け、そのうちⅡ期を病院と開局薬局に行かせて実務指導をさせるなど様々な臨床教育に向けての取り組みを行っています。形の上では創薬分野も含めた“オール薬剤師”教育が実現しているように見えます。果たしてこれは社会にとって、あるいは薬剤師にとって有益な、あるいは合理的な状況なのでしょうか・・・?詳細に眺めてみると、私は大いに疑問譜がつくものであると思っています・・・。

上記しましたように、5年次の学生は教室配属されているにもかかわらず、1年間で2度、計22週にも渡って実務実習に駆り出され、実質的に教室のテーマについての取り組みは落ち着いてできない、といった極めて窮屈なカリキュラムを強いられています。そんな中で、大学の教員側はこのシステムに対してどの程度その必要性を自覚し納得して今の6年制教育を行っているのでしょうか?おそらく十分理解し納得して指導している教員の人は少ないのではないかと思います。そんなことを考えると、4年制コースを残したことは創薬研究者にとっては正解だったと思います。実質的に4年制卒業後はほとんどの学生は2年間の修士課程に進学していますし、その2年間で十分に研究者教育を進めることが出来ます。むしろ研究者と割り切って進むのであれば本当にこの制度はいい制度なのかもしれません。

 

実はこの「創薬教育」と「実務者教育」を分けようという意見は、6年制への移行時に真剣に検討された事項ではありました。詳しい経緯はわかりませんが、結局その考えは否定され、現在のように”オール薬剤師”教育が採択されて現在に至っています。私もこの判断は正しかったと思っています。けれどもこの考えは理想に近い考え方で、それを創薬分野も含めてすべての教育者が理解し納得した上で支えていく必要があります。私は現在の状況はその”理解と納得”ということが足りないのではないかと考えています。

私は、上記しましたように、本当は4年制薬学部の存続には反対で、薬学部たるもの”オール薬剤師”を養成する大学でなければいけない!という強い考えを持っています。しかしながらそれは、それを指導する大学側がその考えに対して強い信念がなければ意味がないと思っています。”強い信念”の後には当然”理解と納得”がなければいけないのですが、その”納得”も”理解”も今の教育現場には薄いのではないか?(※決して「ない」とは思いませんが・・・)と思います。

 

今の実務実習制度のように、イヤイヤ進めている”形骸的な”薬剤師養成システム”などは全く意味がない!むしろ、害の方が大きい!だったら、初めにも申し上げたように、やめてしまってもいい!と考えています。

 

(・・・少々このブログでたくさん書きすぎてしまたので、今回はこのくらいでやめておきます。あと「パート3」以下でもう少し具体的な私の今後の大学教育に対するカリキュラムや方針についての具体的な意見を述べていきたいと思います)

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