マスメディアの責任は?・・・一連の“胃瘻”記事について 【胃瘻】、【医療ルネサンス】

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マスメディアの責任は?・・・一連の“胃瘻”記事について 【胃瘻】、【医療ルネサンス】
2014/01/22

去る、平成26年1月14日から1月20日まで5回シリーズで讀賣新聞の「医療ルネサンス」に「胃ろう再考」というタイトルで連載記事が組まれていました。この「医療ルネサンス」で「胃瘻」を取り上げた連載記事を組むのは私が把握しているだけで3回目になるかと思います。過去にアメリカの状況を取り上げた記事では、「米国は延命につながらないというのが浸透しているのであまり普及していない」とか、「胃瘻をあえてつけないで最期を迎えたのはよかった」とかいう胃瘻に対してはネガティブな論調が殆どでした。細かく注意して読むと、確かに決定的に胃瘻を否定する記事にはなっていません。しかし一般の人がこの記事を見た時にはおそらく胃瘻に対してはネガティブなイメージを持ってしまうだろうなぁ・・・。という印象は否めません。私は、胃瘻や在宅に関わる1人の医療スタッフとして、このようなマスメディアの論調に若干の危機感もってきました。ですから在宅関係の講演会などで話をする機会が与えられた時には、折に触れてこの記事を取り上げ、「このような記事に惑わされずにメリットデメリットを正しく理解した上で胃瘻を捉えてほしい!」というような話をしてきました。これらの記事が影響しているのかどうかはわかりませんが、近頃実際に胃瘻の造設者は減少し、なかには胃瘻を拒否して変わって胃管チューブを希望するケースも珍しいことではないそうです。このような現象は明らかに胃瘻に対する誤解、認識不足から生まれてくるものです。
今回取り上げた「胃ろう再考」の記事では、ようやく「胃瘻のプラス面も知っておきましょう」というような論調に変わりました。そのことについては、少し安堵感を覚えたのですが、記事を読み進めていく中で、「ここ数年、終末期医療の論議の中で、胃ろうがしばしば取り上げられ、否定的なイメージがまとわりつくようになった。・・・」と書かれていました。これは、いかにも他人事のような表現です。あたかも“マイナスイメージがついてしまったのは社会が勝手にそのような間違った認識になってしまっている・・・”、というように受け取れます。果たしてそうでしょうか?まだ十分に“胃瘻”というものの是非が取りざたされていなかった頃に、率先してあのようなネガティブな記事をどんどん掲載して来たマスメディアにはその責任はないのでしょうか?どのような記事であれ、私は一般の人に対してはメディアの影響はずいぶんと大きいと思っています。従ってそれなりに調査をした上で慎重な論評をしてほしいと思います。
ただ誤解していただきたくないのは、私は決して“胃瘻全面支持者”でもありませんし、本人や家族が十分に胃瘻の本質を理解し、納得の上で拒否するのであればそのことについては、何の問題もないと思っています。ただマスメディアを含めて、“胃瘻”そのものを否定的にとらえる事について疑問を感じているのです。

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